第185章 さあ、面白いところはこれからだ!

橘結衣の指が鍵盤の上を目にも留まらぬ速さで駆けた。指先が残像を残すほどだった。

ソナタの魔力が、この瞬間、余すところなく剥き出しになる。

聴いている者たちは皆、いつの間にか戦乱のただ中へ引きずり込まれていた。互いに斬り合う兵士たち、逃げ惑う民。血と土埃の匂いまでが、音の隙間から立ち上ってくる。

音楽はたやすく、その場にいる者たちを旋律の裏にある物語へ連れ去ってしまう。

終盤、いったん波が引くように音が鎮まった。数え切れない犠牲の果てに、その国の軍は敵を退ける。夜が明けないまま終わる戦などない。闇の向こうには、必ず暁が待っている。

最後の一音が、すっと止まった。

十五分に及ぶ演奏が...

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